解離性胸部大動脈瘤とは
大動脈解離では突然始まる特徴的な症状から診断できます。
大動脈解離を発見するには、その症状と共にまず胸部X線検査を行います。この検査では、大動脈の拡張が確認できます。また、造影CT検査では、素早く確実に大動脈解離が描出されるため、緊急時に役立ちます。大動脈解離を起こした人はICU(集中治療室)でバイタルサイン(脈拍、血圧、呼吸数)を厳密に監視する必要があります。また死亡率は、大動脈解離が発生した2~3時間以内で最も高くなっており、したがって可能な限り早く、脳、心臓、腎臓への十分な血液供給を維持できる最低値まで心拍数と血圧を下げる必要があります。
手術を受けた人も含め大動脈解離を起こした人は、普通はその後の生涯を通じて、血圧を低く保つよう薬物療法を継続しなければなりません。これは大動脈の負荷を減らすのに役立ちます。普通はベータ遮断薬かカルシウム拮抗薬に加えて別の種類の降圧薬、たとえばアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬などを併用します。また、一旦は回復しても後に起こる合併症に注意して長期の経過観察が必要です。最も重大なのは、新たな解離の発生、弱くなった大動脈での動脈瘤の発生、大動脈弁からの逆流の増加です。
大動脈解離を治療しなければ、約75%の人が2週間以内に死亡します。
解離性胸部大動脈瘤の主な症状
引き裂かれるようなと形容される突然の激痛で発症することが特徴です。
最も多いのは胸の痛みですが、背中の肩甲骨の間に感じられることもよくあります。この痛みは大動脈に沿って解離が広がるにつれて移動します。
解離が進行すると、大動脈から分枝している動脈の分岐部がふさがれ、血流が遮断されることがあります。したがって、どの動脈が詰まるかによって症状が異なります。たとえば、脳へ血液を供給する脳動脈がふさがると脳卒中が、心筋へ血液を供給する冠動脈がふさがると心臓発作が、腸へ血液を供給する腸間膜動脈がふさがると突然の腹痛が、腎臓へ血液を供給している腎動脈がふさがると腰痛が、脊髄動脈がふさがると神経が損傷を受けて、異常感覚や手足を動かせなくなる障害が起こります。解離した部位から血液が漏れ出して胸部にたまることもあります。解離部位が心臓に近い場合には、漏れ出した血液が心膜腔(心臓を覆う2層の膜の間)にたまることがあります。このような状態になると心臓は血液を十分に受け取ることができなくなり、死に至る心タンポナーデを起こします。
解離性胸部大動脈瘤の主な原因
大動脈解離のほとんどは動脈壁がもろくなったために起こります。動脈壁の劣化に最もかかわっているのは高血圧で、大動脈解離を起こした人の3分の2以上が高血圧です。
大動脈解離は、特にマルファン症候群やエーレルス‐ダンロー症候群などの遺伝性結合組織疾患でも起こります。これらは、大動脈縮窄や動脈管開存症(大動脈と肺動脈が連結している状態)、大動脈弁欠損などの心臓や血管の先天異常によっても起こります。他の原因には、アテローム動脈硬化や外傷などがあります。まれに、血管造影検査などでのカテーテル挿入中に血管壁を傷つけることによって生じたり、心臓や血管の手術中に起こる医療事故もあります。
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